近年ではカイロプラクティックアジャストメントが脳にどう影響するかというリサーチが多くなってきました。個人的にも一番興味のある分野です。
今回紹介する研究は2016年に発表され、カイロプラクター達の間で一時的ですがとても話題になった「アジャストメントと脳」に関する代表的な研究の1つです。
脳や神経を研究する・実験を行う専門家ではないので、正直なところこの研究内で使われているような設備や道具には全く馴染みがなく、内容を完全に理解するのは難しいのですが、わかる範囲で紹介したいと思います。
Manipulation of dysfunctional spinal joints affects sensorimotor integration in the prefrontal cortex: a brain source localization study.
『機能不全のある脊椎関節に対するマニピュレーションが前頭前野における感覚運動統合に与える影響』
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近年、カイロプラクティックアジャストメントが脳に及ぼす影響はいろいろと研究されてきたが、脳のどの部分に影響しているかまではハッキリとはわかっていないので、どの部分に影響するかを調べるための研究。
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19人のSCPの参加者が対象。
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Sub clinical pain(SCP)=繰り返し起こる脊椎部の痛みや鈍痛・かたさ、特にまだケアなどは受けていない状態のもの。
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上肢からの情報を脳で統合する際に、以下の2つのセッション間でどのような差が出るか調べる。
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脊椎マニピュレーションを受けた場合と、受けていない場合で脳に対する影響にどういった違いがでるか。
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15年の臨床経験のあるカイロプラクターが脊椎・骨盤をチェックして必要なところにマニピュレーションを行う。
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使用されるマニピュレーションはHVLAタイプ(高速度低振幅)のもの。
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脊椎マニピュレーションを受けた場合は自覚として身体や機能が変わったのが感じ取れた(受けていない場合との主観的な違い)
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①反対側の1次体性感覚野・②前頭前野・③帯状皮質・④反対側の2次体性感覚野・⑤同側の2次体性感覚野の中でどこに一番変化・反応が出るかを観察した結果、前頭前野で有意な変化が見られた。
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この研究結果は以前から言われているアジャストメント後の感覚運動統合に対する影響を再現するものとなり、さらにはそれが主に前頭前野で行われることが見て取れた。
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前頭前野は脳の中でも実効制御といった重要なはたらきが行われる場所なので、脊椎マニピュレーション、転じてカイロプラクティックケアが脳にも影響している可能性が見て取れる。
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カイロプラクティックケアの前後で痛みが軽減されるのは、この研究で見られたような感覚運動統合と適切な運動支配の改善による可能性が高く、それらが前頭前野の主な機能でもある。
この論文から思うこと
この論文が発表されてから何度も読み返しましたが、まだまだ完全に理解できていない状態です。ですが、少なくともアジャストメントが脳の機能にも影響していると証明できるのはとても興味深いところです。
普段カイロプラクターとして仕事をしていると、自分自身でも何でこんな変化が起きたのか(良い意味で)説明ができないようなケースに遭遇することがあります。(カイロプラクターあるあるでもあると思いますが)
そういった部分と関係しているのではないかなと思っていて、カイロプラクティックが生まれたきっかけでもある「脊椎へのアプローチで耳が聞こえるようになった」というのも、現代科学で説明がつくのではないかなと考えています。
多くの人に知ってもらいたい研究です。
【重要】なぜ脊椎マニピュレーションなのか?
カイロプラクティックアジャストメントと脊椎マニピュレーションは違うものです。
では何故こういった研究で脊椎マニピュレーション(SMT=Spinal manipulation therapy)などど表記するのかというと、世間一般や異業種間でなじみのある共通語を使う必要があるからです。
あるカイロプラクターからの受け売りですが、論文を発表している人達も本当はカイロプラクティックアジャストメントという言葉を使いたいらしいです。ですが、カイロプラクティックを世間にもっと知ってもらうためにまずは共通語を使ってこちらの世界に馴染んでもらうということをしているようです。
今回紹介したHeidi Haavikさん達の論文を実際に読むとわかりますが、脊椎マニピュレーションの説明の欄でしっかりとカイロプラクティックアジャストメントに関する詳しい説明をしています。
こちらの論文は無料でフルテキストが手に入るので是非読んでみてください。
- Lelic D, Niazi IK, Holt K, Jochumsen M, Dremstrup K, Yielder P, Murphy B, Drewes AM and Haavik H. Manipulation of Dysfunctional Spinal Joints Affects Sensorimotor Integration in the Prefrontal Cortex: A Brain Source Localization Study. Neural Plast. 2016 Mar.
- フルテキストはこちらから
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