ゴルフは競技人口の多い人気スポーツの1つで、世界のゴルフ人口は5500万人とも言われています。ですが、その層は年齢や技術のレベルを考えるととても幅広いものです。
またゴルフは、競技歴の長いスポーツのうちの1つでもありますが、 あるデータによると72%のゴルファーが今までにケガが原因で満足いくプレーができない、大会に出られなかったといった経験があると答えています。
ゴルフをより長く楽しんでいただくためにも、ケガやからだのことに関して知ることは大切です。
このページではゴルフで起こりやすいケガや障害・身体の問題についてまとめています。
*障害とは一般的に事故や突発的なものが原因でない、使いすぎ・オーバーユースなどが原因でおこるケガのことを言います。
*このページ内での具体的な数値・データは全て参考文献からの引用です。
プロとアマの違い
プロとアマのゴルファーにおけるケガの起こりやすさや部位には違いがあります。それは練習量や技術レベルの違いと深い関係があります。
また、最近ではプロの選手は専属のトレーナーなどを付けて、筋力や身体の機能をアップさせるためのトレーニングを行うことが増えてきました。PGAツアーなどでは専属のカイロプラクターがケアを提供することもあります。
その一方で、アマチュアゴルファーの中ではウォームアップや準備体操などをせずにいきなり打つという方もまだまだ多いようです。
◆プロフェッショナルゴルファー
プロの場合は特に練習量の多さ・練習の繰り返しによるところが大きいと言われています。
もちろんプロということで、多少のケガがあっても練習しないといけない、大会に出なければいけないといった状況も関係していると思います。
データでは、プロでは80%がオーバーユースによるもの(つまり障害)、12%がダフりなど(Fat shot)からくるもの、5%がスイング中の体の捻りからくるものとされています。
◆アマチュアゴルファー
一方、アマの場合はフォームなどの技術面がしっかりしていないことが原因となる場合が多いです。下の表からも読み取ることができますが、プロと比べると肘を傷めることが多いとされています。
データでは、53.9%のケガが技術的な問題が理由とあります。また、プロとアマでは筋肉の使い方の効率にも差があると言われています。
ゴルフで起こりやすいケガの部位と発生率
上の表をみていただくとわかるかと思いますが、ゴルフでは主に腰・手首・肘のケガが統計的に多いことがわかります。
利き腕にもよりますが、一方向に向かって打つという競技特性から、左右差などの身体の使い方の違いも出てくることで、どのようなケガが起こりやすいかというのが左右でも変わってきます。
ゴルフでよくみられる腰の問題・ケガ
ゴルフでは腰痛などの腰の問題が一番多いとされています。実際にOSCを利用されているゴルファーの中でも圧倒的に腰の問題を抱えている方が多いです。
起こりうるケガとしては以下のようなものがあります。
- 筋挫傷(筋肉の問題)
- 椎間板ヘルニア
- 椎間関節症
ゴルフのスイングにおける動きが腰椎・骨盤帯といった場所に圧迫・側屈(横に曲げる)・捻りといった大きなストレスをかけるからです。
また腰部は、股関節~足首といった部位をコントロールする神経が出ている場所なので、腰と一緒に腰以外に問題を抱えている方も多くみられます。
腰に対する圧迫の力がゴルフスイングにおいては体重の8倍程度かかるというデータもあります。(*参考までにジョギングでは3倍)
スイングのフォームが安定していないことで、フォロースルーにおける腰を反った状態が椎間関節や椎間板などにストレスを与えてしまうことも要因の1つです。
慢性的な腰痛を持っているゴルファーは適切なアプローチをしないと再発しやすくなり、練習後などに痛みを訴えやすくなります。
*深部の腹筋(外腹斜筋・腹横筋など)ではなく脊柱起立筋を主に使ってしまうことが腰痛の原因にもつながります。
ゴルフでよくみられる手首・手の問題・ケガ
この部位をケガする原因として一番多いのはダフりなどのボール以外を打ってしまった時です。
その為、突発的なケガが多いということになりますが、使い過ぎ・オーバーユースや、スイングフォームを変えたことが原因で起こることもあります。
インパクトの際の急激な減速の力が手や手首、場合によっては肘の筋肉や靭帯に大きなストレスを与えるからです。
起こりうるケガとしては以下のようなものがあります。
- 有鉤骨鉤骨折(上の図の赤くなっている骨)
- 腱鞘炎・腱障害(尺側手根屈筋などのオーバーユーズによるもの)
- その他捻挫や筋挫傷
ゴルフでよくみられる肘の問題・ケガ
肘のケガは特にアマチュアの方に多く、女性に多いというデータがあります。
起こりうるケガとしては以下のようなものがあります
- 上腕骨外側上顆炎(テニス肘)*リンクあり
- 上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)*リンクあり
- 筋肉の問題(腱鞘炎・腱障害)
*ゴルフでもテニス肘になることがあります。
肘のケガも手首と同じような原因で起こるとされていますが、スイング技術などの技術的な問題と関係していることがほとんどのようです。
ゴルフでよくみられるその他の部位のケガ
◎肩のケガ(ゴルファーの8~12%が経験すると言われています。)
インピンジメント症候群・腱板損傷・肩鎖関節・肩甲上腕関節の問題や関節炎などが報告されています。
野球やバレーボールなどのオーバーヘッドスポーツと比べると少ないですが、スイングの際に腕が肩よりも上がると、肩が不安定な状態になるので、そういった動きが繰り返される過程で起こることが多いです。
スイングのどの時点で痛みがあるかなどの情報が評価の上で重要となります。
◎膝のケガ (ゴルファーの約6%が経験すると言われています。)
スイングの際の体重移動で膝に圧迫のストレスがかかることによるものが大きいとされています。股関節や足首からの影響も受けやすい部位です。
◎肋骨のケガ
身体を捻る動作が続くことで、肋骨にもストレスがかかり疲労骨折などを招くことがあります。胸椎や肋骨に痛みがある際は専門家の評価が必要です。
◎その他、プレー中の事故(ゴルフカートによるもの・クラブやボールが頭に当たるなど)による頭や目のケガも報告されています。
スイングからみるゴルフのケガ
(1)ボールアドレス、(2)バックスイング、(3)フォワードスイング
(4)ボールインパクト、(5)フォロースルー前期、(6)フォロースルー後期
*上の図ではスイングのどの段階で、からだのどこの部位に負担がかかりやすいかを示しています。
スイングの技術が昔と違って変わってきていることもケガが起こる要因の1つです。
*OSCではスイングフォームなどに関するアドバイスは出来かねますので、より詳しい情報や改善方法についてはは、ゴルフコーチなどの専門家にご相談ください。
スイングスピードが上がると身体への負担も上がるので、適切なトレーニングと併用して身体がその力に対応できるようにする必要があります。その他スイングの動きやクラブが何で出来ているかといったことも考慮するべき要因の1つになってきます。
ケガの評価の際には、どのタイミングで痛みが出るのか、どの動きが原因で問題が起こったのかをしっかりと評価する必要があります。
特に、フォワードスイング(3)においては、バックスイング(2)と比べて、体幹周りの筋肉をより使うことになるので、ケガの予防・パフォーマンスアップには体幹のトレーニングが重要なことはイメージしやすいと思います。
*参考までに、フォワードスイングにおいてはバックスイングと比べると、
- 外腹斜筋が3倍の働きをする
- 脊柱の安定筋としての脊柱起立筋が4~5倍の働きをする
- 右の肩を内転させる筋肉が3~4倍の働きをする
- 右の方を内旋させる筋肉が5~7倍の働きをする
と言われています。
体幹部分の柔軟性・力強さ・関節の安定性のバランスがとれていて、しっかりと機能していることが脊柱へのストレスに対抗する上で重要です。
ゴルフで起こりうる全てのケガに対して言えることですが、正しいフォームなどを身につける為にもコーチや専門家への相談は必要になってくるかと思います。
それに加えて身体のメカニズムに関しても精通した専門家にサポートしてもらえるとより良いかと思います。
スポーツカイロプラクティックとゴルフ
「カイロプラクターにみてもらうことは、私がスイングを練習するのと同じくらい大切なことです。」by タイガー・ウッズ
多くのスポーツ選手が身体ケアの選択肢の1つとしてカイロプラクティックを利用しています。
カイロプラクティックがゴルフパフォーマンスにも影響するという面白い研究もあります。(3)
まとめ
- ゴルフは強度の低いスポーツと思われがちですが、実際は身体を傷めることが多いスポーツでもあります。
- 技術的な問題とオーバーユーズがケガの原因となることが大半を占めています。
- ケガの話ばかりしてしまいましたが、正しく行えば長く続けられる、健康にも良いスポーツです。
- 競技歴の長いスポーツなので、より長く楽しむ為にも身体のケアが大切です。上記に挙げたような問題でお困りの方、これを機に身体のケアをしていきたい方、ゴルフをより長く楽しんでいきたいという方は是非一度ご相談ください!
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参考文献:
- McHardy A, Pollard H and Luo K. Golf injuries: a review of the literature. Sports Med. 2006;36(2):171-87.
- Cabri J , Sousa JP, Kots M and Barreiros J. Golf-related injuries: A systematic review. Eur J Sport Sci. 2009;9(6):353-66.
- Costa SM, Chibana YE, Giavarotti L, et al. Effect of spinal manipulative therapy with stretching compared with stretching alone on full-swing performance of golf players: a randomized pilot trial. J Chiropr Med. 2009;8(4):165-170.
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